バリュー平均リバランス法の提案 ― ほったらかし新投資術

これまで,前置きとしてインデックス投資,ドルコスト平均法,バリュー平均法に触れました.

今回はそれを踏まえて,私が現在実践しているオリジナル投資法をご紹介します.
題して:

バリュー平均リバランス法
Value Averaging by ReBalancing
略して VARB法

VARB法の特徴

バリュー平均リバランス法の特徴をごく簡単に示すと,

  • 普段はインデックス投資信託による世界分散「ほったらかし投資」
     - 資産積立期は,毎月定額自動積立.
     - 資産維持期は,全く何もしない.
     - 資産取崩期は,毎月定額自動売却.
  • 年1回,予め設定した時期に「バリュー平均リバランス」
     資産比率を元に戻す通常のリバランスと異なり,
     バリュー平均法の考え方でリバランスを実行.

たったこれだけのことで,バリュー平均法と同様の優れたパフォーマンスを享受できます! バックテストの結果は次回以降ご紹介しますが,通常のリバランスと比較して年率リターンでおおむね0.5pt以上の向上が期待できます.バリュー平均法と比較して,実践が容易でしかも応用範囲の広い投資法です.

具体例による解説

詳細な説明をする前に,この投資法のイメージを掴んでいただけるよう,まずは具体例を示します.

VARB法では,
「低リスク資産」(国内債券クラスまたは預貯金)20%と,
「高リスク資産」(株式,REIT,外国債券など)合わせて80%とで,
目標となるアセットアロケーションを構成します.

ここでは,例として以下の目標アセットアロケーションを組むものとします.

  • 国内債券クラス:  20%
  • 国内株式クラス:  20%
  • 先進国株式クラス: 40%
  • 新興国株式クラス: 20%

これはあくまで一例であり,高リスク資産内の配分比率は基本的に自由です.株式だけでなく,REITや外国債券を組み込んでも差し支えありません.

VARB法においても,バリュー平均法と同様に「バリュー経路」を用います.VARB法でのバリュー経路は,前回リバランス時のバリュー経路と,その後の積立額(取崩し額),および期待リターンから,機械的に計算します.バリュー平均法でのバリュー経路が「資産目標額」という意味合いを持っていたのに対し,VARB法では積み立ての結果として得られる額なので,ちょっとニュアンスが違います.ここでは,バリュー経路計算のための期待リターンを,年6%に設定することとします.

例1. 資産積立期のリバランス

まず,毎月一定額を積み立てているケースでのリバランス例を,表1に示します.ここでは,月々 5万円を積み立てているものとします.積立額の内訳は目標アセットアロケーションに従い,以下のとおりとします.

  • 国内債券クラス:  1万円
  • 国内株式クラス:  1万円
  • 先進国株式クラス: 2万円
  • 新興国株式クラス: 1万円

表1 資産積立期のバリュー平均リバランスの例

(1) バリュー経路を算出

前回リバランス時のバリュー経路に期待リターンの6%分を加えた(すなわち1.06倍した)額と,追加投資総額(年間積立額60万円)にその半年分の期待リターンを加えた(1.03倍した)額とを足し合わせ,今回のバリュー経路とします.追加投資分の期待リターン額は,厳密には投入した日付によって変わってきますが,計算の簡略化のため,期間のちょうど真ん中(半年前)にすべて投入されたものと仮定します.

(2) 高リスク資産のそれぞれの売買金額を算出

リバランスによって,高リスク資産のそれぞれが,バリュー経路配分額,すなわち
  (今回バリュー経路) × (目標アセットアロケーションの比率)
となるように,売買金額を計算します.表1では,国内株式はバリュー経路に満たないので,差額を購入します.先進国株式と新興国株式はバリュー経路を超過しているので,差額を売却します.

(3) 低リスク資産の売買金額を算出

高リスク資産の売買により,過不足金が生じますこれを,低リスク資産の売買によって埋め合わせます.表1では,高リスク3資産の売買で,合計48,915円の余剰金が生じます.その分,国内債券を購入します.

(4) 売買の実行

(2)と(3)で求めた金額に従い,売買を実行します.表1には示していませんが,課税口座では売却益に対して税金が差し引かれます.その分,購入額を差し引く必要があります.そのためには,売却を先に行い,受取額が確定してから購入を行うのが良いでしょう.

要するにVARB法では,高リスク資産をバリュー経路に追従させ,それによって生じた過不足を低リスク資産で吸収するのです.リバランス前後の資産額とバリュー経路との関係を簡単に描くと,図1のイメージですね.結果的に,低リスク資産の比率は相場によって増減し,目標アセットアロケーションとは一致しません.

図1 バリュー平均リバランスの概念図

低リスク資産の役割は,バリュー平均法における待機資金と似ています.ただ,バリュー平均法での待機資金の位置付けが今一つ曖昧であったのに対し,VARB法では,低リスク資産をアセットアロケーションの一角として位置付けます.積み立てや取り崩しの際には,低リスク資産も含めて目標比率に従って売買を行います.

例2. 資産維持期のリバランス

次に,前回リバランス以降,資産の投入も取崩しもしていないケースの例を,表2に示します.

(1) バリュー経路を算出

追加投資はありませんので,前回リバランス時のバリュー経路の1.06倍を今回のバリュー経路とします.

(2) 高リスク資産のそれぞれの売買金額を算出

表2では,国内株式と新興国株式でバリュー経路に満たないため,差額を購入します.一方,先進国株式はバリュー経路を超えているため,差額を売却します.

(3) 低リスク資産の売買金額を算出

高リスク資産の売買で不足金21,102円が生じます.その分,国内債券を売却します.

(4) 売買の実行

(2)と(3)で求めた金額に従い,(さらに税金分を調整して)売買を実行します.

表2 資産維持期のバリュー平均リバランスの例

例3. 資産取崩期のリバランス

毎月一定額を取り崩しているケースでのリバランス例を.表3に示します.ここでは,月々 10万円を自動売却によって取り崩しているものとします.売却額内訳は目標アセットアロケーションに従い,以下のとおりとなります.

  • 国内債券クラス:  2万円
  • 国内株式クラス:  2万円
  • 先進国株式クラス: 4万円
  • 新興国株式クラス: 2万円

課税口座の場合は,これらの金額から運用益に応じた税金が差し引かれます.

取崩期においても,追加投資総額を負の値としてバリュー経路を計算する点に注意すればよく,リバランス方法はほぼ同じです.

表3 資産取崩期のバリュー平均リバランスの例

例4. 低リスク資産が不足する場合

リーマンショックのような暴落時に起こりうるパターンの例を,表4に示します.バリュー経路から計算した高リスク資産の購入額があまりに大きく,低リスク資産をすべて売却しても足りません.表4は資産維持期の例ですが,資産積立期,資産取崩期においても起こりえます.

表4 リバランス時に低リスク資産が不足する例

このような場合の対処法を,表5に示します.まず,現在のバリュー経路を
  (資産の評価総額) × (100/80)
に設定し直します.その上で,各資産の売買額を算出します.結果として,低リスク資産の全額売却でちょうど辻褄が合うことになります.資産額とバリュー経路との関係を簡単に描くと,図2のイメージとなります.

表5 低リスク資産が不足する場合のバリュー経路設定修正例

図2 バリュー経路設定修正の概念図

このように,バリュー経路への追従ができなくなった場合には,バリュー経路自体を追従可能な金額まで切り下げることで,対処します.バリュー平均法のような,バリュー経路に合わせるための追加資金投入は,一切行いません.

なお,資産取崩期においては,低リスク資産が極端に少なくなると毎月の取崩しに支障が生じます.そこで,リバランス後の低リスク資産額が,年間の低リスク資産取崩額を下回る場合は,バリュー経路を
  (資産の評価総額) × (100/80) - (年間取崩額) × (20/80)
に設定し直すことで,毎月の取崩額を確保します.

おわりに

新提案のバリュー平均リバランス法(VARB法)について,いくつかの例を示しながら,積み立て,取り崩し,リバランスの方法を解説しました.

次回は,バックテストの結果をご覧いただきたいと存じます.

バリュー平均リバランス法(VARB法)で25年間長期投資のバックテストを行い,資産積立期・維持期・取崩期においてパフォーマンス向上が確認できました.
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