インデックス投資+ドルコスト平均法で本当に利益は得られるの?

ドルコスト平均法で月々一定額を積み立て,インデックス投資で世界経済全体に分散投資する方法は,手間をかけることなく市場の平均的なリターンが得られるので,大変堅実な方法です.株が趣味で儲かりそうな銘柄を探すのが大好き,というような人は別として,投資に無駄な時間を使うよりは,本業に精力を集中し,あるいは他の趣味を楽しみたい,という人々にはお勧めの投資法です.

私の資産形成は,若い頃は預貯金のみ,その後投資信託や株式投資も多少行いましたが,2013年からインデックス投資とドルコスト平均法へと変更しています.

しかし,果たして良いことづくめでしょうか?

インデックス投資+ドルコスト平均法 の課題

インデックス投資+ドルコスト平均法 には現状で以下の課題があると,私は考えています.

  1. 世界経済の長期的成長が大前提
  2. 出口戦略に関する議論が不十分

以下,順に説明します.

1. 世界経済の長期的成長が大前提

インデックス投資+ドルコスト平均法は,長期的にみて世界経済が右肩上がりに成長することを前提としています.確かに,過去の実績では,ある程度(数年)の期間,世界的に経済が落ち込んだり,単一国(例えば日本!)の株式が長期にわたって低迷したりすることはあっても,世界経済全体が長期間(10年以上)低落傾向だったことは無いようです.

一方,将来的にはどうでしょう? 私としては,長期的に世界経済が成長すること自体は,信じても良いと考えています.ただ,問題はその成長率です.ここ数十年で,日本をはじめ先進国の発展は徐々に緩やかになってきているように感じます.一方で,新興国はまだまだ発展の余地があります.急速に発展したかと思えば危機に陥ったりと,不安定ではありますが,成長の可能性は先進国より上だと思います.そして,今は貧しくても,将来的に新興国として新たに発展する国も現れてくるでしょう.

そうやって,世界全体として順調に経済発展が続けばよいのですが,地球の環境や資源を持続させていくことが今後ますます重要になるため,これまでに比べて発展が抑制されることが懸念されます.世界の人口も,今は高い増加率で増え続けていますが,いずれ増加は抑制されるでしょう.その結果,世界経済に分散投資した場合のリターンも,長期的に減っていく可能性があるのではないかと考えます.

過去30年くらいの実績でみれば,インデックス投資で世界に投資すれば,アセットアロケーションによる違いはあるものの,株式主体の構成であれば,年間あたり平均で 4~6%くらいのリターンが得られています.ドルコスト平均法で15年以上積立を続けたと仮定すれば,最悪のタイミングで最後に一括解約した場合でも利益が出ています.これが,仮に年平均2%くらいに期待リターンが減ったらどうなるでしょう? リターンが下がっても,その変動(リスク)はあまり変わらないとすると,長期投資でも最終的に損失が出てしまうケースが増えます.

損失が出るとしても,そのタイミングでの投資成績としてはあくまで「平均点」であり,より大きな損失を被った投資家が多数いる中では,まだマシな成績のはずです.インデックス投資は,もともと平均点を目指す投資法ですから,それで十分ともいえます.しかし,インデックス投資家の多くは,いくらかの長期的な利益を期待しているでしょうから,もし長期で損失が出た場合,「話が違う!」と感じる人も多いと思います.

株式投資やインデックス投資をしている方々で,このような懸念をさせているのはごく少数かと思います.取り越し苦労かもしれませんし,私もこれまでのリターンが続くことを望んでいます.ただ,20~30年先を考えた場合,平均リターンが下がる可能性があることも,頭の片隅には入れておいた方が良いと私は考えています.

2. 出口戦略に関する議論が不十分

インデックス投資の場合,「入口」すなわち投資を始める際の考え方や方法論や,投資を継続していくことに関しては,数多くの議論や情報提供がありますが,それに比べて,「出口」すなわち資産を売却する際の議論は,あまり見られません.

もっとも,以前に比べれば最近は増えつつあり,

  • 資金が必要になったら,その時点で躊躇せずに売却すればよい.
  • 月々取り崩す場合は,積立時とは逆に,定額売却よりも定口売却の方が有利.
  • 老後の取り崩しにおいては,定額よりも定率で売却する方が,資金枯渇の危険が少ない.

などといった議論を,時々見かけるようになってきました.それでも,入口での議論に比べると圧倒的に少ない.

アクティブ投資であれば,どのようなタイミングで売却(利益確定 or 損切り)すべきかという出口の視点は,入口とともに極めて重要です.そのため,インデックス投資は出口(終わり)がない,との誤解を受けることもあるようです.

出口戦略の議論が少ない理由の一つとして,日本では一般投資家がインデックス投資を行うようになってからの歴史が浅く,現時点で資産を増やす過程の方がほとんどで,蓄えた資産を近々取り崩そうとする人はごく少数だから,ということはあると思います.

しかし,ほとんどのインデックス投資家は,未来永劫にわたって一族の資産を増やすというよりは,蓄えた資産の多くをリタイア後の生活に使うことを目的に,資産形成をしていると思われます.インデックス投資の普及のためには,将来の取り崩しまで含めた議論をもっと行い,バックテスト,シミュレーション等でも示すなど,インデックス投資を続けた場合の将来的な見通しが容易に得られるよう,さらなる情報提供が必要と考えます.

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2017

シェアする

フォローする